ユニバーサル就労から考える雇用創出について
- 市川まみ
- 6月28日
- 読了時間: 17分
2024年12月10日(火)
一般質問Vol.7
1.ユニバーサル就労から考える雇用創出について
2.稼げる公共施設を目指して

1.ユニバーサル就労から考える雇用創出について
本市には全国に先駆けたユニバーサル就労支援のすばらしい取組がある。
ユニバーサル就労支援の対象にはシルバー人材も含まれるのではないか。業
務の切り出しが、人材不足という社会課題解決の一翼を担うと考え、以下質
問する。
(1) シルバー人材センターの就業を促進するための活動は、働き手や受入先のニーズに対し十分だとお考えか。
(2) シルバー人材センターとユニバーサル就労支援センターの連携体制はいかがか。
(3) 人材不足という社会課題に対し、本市は十分な取組を行うことができているとお考えか。
動画23.15〜39.25
市長(小長井義正 君) 市川議員の御質問にお答えいたします。
初めに、「ユニバーサル就労から考える雇用創出について」のうち、シルバー人材センターの就業を促進するための活動は、働き手や受入先のニーズに対し十分だとお考えかについてでありますが、富士市シルバー人材センターは、豊富な知識や技能を持つシルバー世代が仕事や社会奉仕活動等を通じて生きがいのある生活を送り、高齢者の能力を生かした活力ある地域社会に貢献することを目的に設立された公益社団法人であります。市内に住むおおむね60歳以上の健康で働く意欲のある方なら誰でも会員になることができ、昨年度末における会員数は1260人で、近年は微増傾向にあり、男女の割合は、男性が7割強、女性が3割弱となっております。
シルバー人材センターにおける就業は、センターが高齢者に適した仕事を依頼者から請け負い、就業を希望する会員に仕事を提供しており、請負事業が9割近くを占め、ほかに派遣事業などが1割強となっております。
年間の就業延べ人数は、直近5年間で13万人から14万人程度で安定した就業実績となっており、その受入先は、企業等が約60%、官公庁が約22%、個人等が約18%と企業からの発注が多い状況であります。
会員の実施する業務は、草刈りや清掃など屋内外の一般作業をはじめ、植木の剪定やふすまの張り替えなど技能を必要とする分野、駐車場やまちづくりセンターなどの管理、受付や経理事務など、多岐にわたっております。一方で、一般的に体力的負担が少なく、高齢者に向いた安全な軽作業や清掃業務等に受注業務が偏っており、限られた職種や短期雇用が中心となっている傾向があります。このため、多様な働き方や安定した雇用機会を求める高齢者の要望には必ずしも応えられておらず、全ての働き手や受入先のニーズに対して、十分とは言えない面があると認識しております。
シルバー人材センターでは、このような課題に対し、事務的作業など幅広い業務の受注確保に取り組むとともに、女性向けの仕事を増やすことで女性会員を増やしていく取組などを推進していると伺っております。
少子高齢化が進行する中、シルバー人材センターにおける就業促進の活動は重要な役割を担っていると認識しておりますので、本市といたしましても、働き手や受入先のニーズにできるだけ応えられるよう、シルバー人材センターに対し、適切な助言や指導を行ってまいります。
次に、シルバー人材センターとユニバーサル就労支援センターの連携体制はいかがかについてでありますが、本市では、年齢や性別、障害の有無に関係なく、働きたくても働くことができない状態にある全ての市民を対象に、ユニバーサル就労の推進に取り組んでおります。平成29年度に開設したユニバーサル就労支援センターでは、支援対象者の個々の能力や特性に応じた支援や職場見学、就労体験などの個々のステップに合わせた支援など、様々な就労へのアプローチを行うオーダーメードの就労支援を行っております。また、ユニバーサル就労の特徴的な取組といたしましては、ユニバーサル就労の理念に賛同し、職場見学や就労体験、雇用の受入れを申し出た企業や団体等を協力企業として認定しております。協力企業に対しましては、自社の全ての業務の内容を専門業務や単純業務などに分け、支援対象者が得意とする業務や短時間就労など、雇用に結びつきやすくする業務分解の取組を提案しております。
一方、シルバー人材センターには、ユニバーサル就労の推進を目的とした各関係団体における協力体制の確保や意見交換を行うユニバーサル就労推進協議会に参加していただき、施策に対する貴重な意見をいただいております。
また、本市における就労相談窓口は、シルバー人材センターやユニバーサル就労支援センターのほかにも、国が運営するハローワーク富士や市の内職相談室があり、情報を共有しながら、希望する働き方や業務内容等に応じた相談を行っております。
加えて、ハローワークやシルバー人材センターなどと連携を図り、就業機会を確保する取組の一つとして、平成29年度に本市と静岡労働局で富士市雇用対策協定を締結いたしました。この協定に基づいて策定した本年度の事業計画には、高齢者の雇用対策、ユニバーサル就労支援などを位置づけ、一体的な取組を展開しているところでありますが、今後も相互に連携しながら、就労支援の強化を図ってまいります。
次に、人材不足という社会課題に対し、本市は十分な取組を行うことができているとお考えかについてでありますが、本市におきましては、人材不足を経営上の課題として抱える中小企業が多く、官民一体となって解決に向けた取組をしていくことが必要であると認識しております。こうした状況を踏まえ、本市では、学生向けの富士地区合同企業ガイダンスや、学生と企業の交流イベントの開催、若手従業員の奨学金返済を支援する市内中小企業等に対する補助など、若者世代の就労を支援する取組を展開しております。シニア世代向けの取組につきましては、毎年、市役所において、ハローワーク富士との共催による就職面接会を開催しており、人事担当者と直接話す機会を持つことにより、仕事に対するイメージがつきやすいと求職者から好評を得ております。
過去にこの就職面接会にユニバーサル就労支援センターが出展した際には、パンフレットの配布や窓口での対話を通じ、求職者にPRを行うなど、ユニバーサル就労支援センターとハローワーク富士の連携により、職業紹介の選択肢が広がる効果があったと考えております。
また、本市の内職相談室においては、子育て中の母親や高齢者など、在宅での仕事を希望する市民に内職をあっせんするとともに、多様な業務を確保するため、企業に業務の提供を呼びかけております。ユニバーサル就労支援センターでの業務分解の取組を参考に、企業においても内職業務の切り出しを行うことで、就労したくてもできなかった市民が自宅でも仕事ができ、企業等の人材不足解消の一助ともなるため、引き続き求人事業所の拡大に努めてまいります。
このような取組に加え、人手不足に対応していくためには、AIやロボット技術の活用のほか、業務改善の推進等による生産性の向上など、効率的な事業運営に向けた支援を強化する必要があると考えております。このため、本市では、本年度、地域産業支援センターBeパレットふじにDX・テレワーク推進センターの機能を付加し、DX、テレワークのさらなる推進を図っております。
このように様々な支援に取り組んでおりますが、本市といたしましても、人手不足は喫緊の課題であると認識しておりますので、人手不足解消のための様々な施策を効果的に実施するとともに、労働供給側、労働需要側、マッチングといった多面的なアプローチにより、雇用状況の改善と就労支援の強化を図ってまいります。
3番(市川真未 議員) 市長から御答弁いただきましたので、通告の順にお話しさせていただきます。
まず、1項目めのユニバーサル就労から考える雇用創出についてお話しさせていただきます。
お許しを得て提出させていただきました資料を御覧ください。

御答弁の中にもありましたが、ユニバーサル就労支援は、生活のこと、仕事のことで悩みを抱えた全ての富士市民であり、働きたいのに働けずにいる全ての人への支援です。昨今の人材不足という社会課題に対しても、このユニバーサル就労という取組は、労働力の発掘というポジティブな支援で社会課題の一翼を担う、すばらしい取組だと思います。
行政の事業では、PDCAサイクルがよく使われていますが、このサイクルを、ただの平面のサイクルではなくて、しっかりとらせん階段のように、最後のAのアクト――改善の部分から、次のPDCAサイクルに上がっていくということが重要だと思います。単にこの単独事業にPDCAサイクルを取り入れるだけではなくて、いいものをしっかりと横展開して、庁内全体で高め合っていく必要があると思います。
そこで、(1)の質問、シルバー人材センターの就業を促進するための活動は働き手や受入先のニーズに対し十分だとお考えかについて、ニーズに対して十分とは言えないという御答弁だったかと思います。こちらの資料に、全国シルバー人材センターの会員数の推移、新入会員・退会会員の推移、そして、新入社員の入会動機の推移を示させていただきましたが、会員数、新入会員数ともに減少傾向にあり、また、加入率は日本の高齢者人口に対して僅か2%です。入会の動機は、「生きがい・社会参加」が35.7%、次に、「健康維持・増進」、「経済的理由」、「時間的余裕」となっていますが、シルバー人材センターでは、最低賃金は保障されず、多くの場合、月10日、週20時間程度までしか働けずに、報酬は月平均3万円程度となっています。
そこで、産業交流部長、シルバー人材センターの業務は、先ほどの答弁で除草や清掃が全体のほとんどを占めていて、植木の剪定や駐車場整備など、力仕事や補助的なお仕事が中心ということでしたが、シルバー人材センターは、本来、生きがいや活力ある地域のために設置しているかと思いますが、果たしてこういったお仕事が生きがいや活力ある地域につながっているとお考えでしょうか、お答えください。
産業交流部長(簑木真一 君) シルバー人材センターにおいて紹介、提供している業務の関係でございます。今、議員からありましたように、シルバー人材センターが紹介、提供している業務の中で比重の多い業務は、植木の剪定ですとか、草刈り、清掃、あと、駐車場、駐輪場の管理ということになっています。
高齢者の就労ということにつきましては、幅広い業種の中から自分が希望する仕事を選択できる仕組みが望ましいと考えております。シルバー人材センターに伺いますと、先ほど紹介した業務のほかにも、事務的な作業ですとか、パソコン、スマホを活用した業務、女性向けの業務などを増やすことにかねてから力を入れているというふうに伺っているところでございます。そんなことで、シルバー人材センターは、市内事業所などを訪問しまして、就業の開拓に努めているとのことですが、引き続き就業の機会の拡大を図っていきたいと併せて伺っています。
いずれにしても、私どもとしても、高齢者に合わせた業務メニューの選択肢の幅が広がるということは大事ですので、その辺りはまたシルバー人材センターといろいろ話をしていきたい、そのように考えております。
3番(市川真未 議員) 今、部長から、幅広い職種で選択できるほうがいいというお答えだったかと思います。シルバー人材センターのほうでも開拓に努めているということですが、実際に他市で、IT分野だとかの仕事をシルバー人材センターに依頼されて、新しい視点が広がったという、いい声も聞いていたりします。
シルバー人材センターは、本当にユニバーサル就労支援センターと近くて、福祉的要素が強い施設だと思います。働きにくさを抱えた人が対象ということで、ユニバーサル就労支援というのがシルバー人材センターの取組すらも包括できるのではないかなというふうに考えております。
シルバー人材センターとの大きな違いというのは、ユニバーサル就労のほうだと、伴走型でオーダーメードの支援を行っているというところだと思います。シルバー人材センターだと、ただの職業あっせんというか、紹介することにとどまっているので、そこが大きな違いかなというふうに思っています。
特に最近のシニアの方々はとても元気です。実際に令和2年からシルバー人材センターの会員数は70万人を切っていますが、これは自分はシルバーではないという元気シニアが増えているためと言われています。なので、元気シルバーにとって福祉的要素の強い働き方というのは合わなくなってきています。
今年、2024年は65歳以上の高齢者が3625万人と総人口の30%近くになりますが、平均寿命を考えると、100年時代と言われますと、定年退職してからも働きたいという人はどんどん増えていくのではないでしょうか。
また、企業も人材を欲しています。答弁で、シルバー人材センターに対して、これからもいろいろ指導を行っていくということでしたが、改めてシルバー人材センターの人材活用を考え直す時期になったのではないでしょうか。
(3)の人材不足という社会課題に対し、本市は十分な取組を行っているかという質問に対してですが、先ほどの御答弁で、学生向けだとか若手従業員向け、若者世代への就労支援をしているということでしたが、こちらは正直、時代に合わせた就労支援がしっかりとできているのかというところは、今、疑問に感じています。
今回の一般質問では、一条議員をはじめ、多くの議員の方が人材不足について触れていたかと思いますが、この社会課題がどんどん顕著になってきたということだと思います。
今は団塊世代からZ世代まで、多世代が混在しており、働き方のニーズもどんどん変化しています。また、コロナ禍により本市も推進しているテレワークであったりだとか、働き方も多様化しており、多拠点で働くなど、いろいろな変容も見られています。
ここまではシルバー世代のお話をさせていただきましたが、今度は年齢層の低い世代のことを考えてみます。こちらの資料にも書かせていただきましたが、昨今、自分の都合のいい時間に働きたいという理由で、あえて非正規の職を選ぶという人が増えてきています。つまり、柔軟な働き方を重視する人が増加しているということです。10年以上前から非正規雇用者数は既に2000万人を超えていましたが、非正規雇用でも、実際は固定勤務が多くて、育児や介護で時間の制約があって働きづらくて、結局、働くことを諦めているという人もいます。これは本当に労働力不足なのでしょうか。
昨今、話題となっている103万円の壁だとかの影響もあって、パート、アルバイト自体の労働時間も減少し続けていると思います。つまり、働きたくても働けない、そこには実は膨大な労働力が眠っているのではないでしょうか。
現在、日本の非正規労働人口は2101万人ですが、例えば1人5時間働く時間が増えれば、1億時間増えることになります。労働人口に置き換えると132万人です。最近では外国人の労働力というものが注目されていますが、例えば外国籍の技能実習生は現在37万人、そして、留学生が28万人です。この外国人の数を合わせた倍の労働力が眠っているんです。就業機会を最大化すること、働ける人数、そして、時間を増やすことが私は重要だと思いますし、これからの時代の1つのチャンスだと思います。
そこで1つ提案させていただきたいのが、マッチボックスというサービスがあります。こちらは自治体公式のスポットワークのプラットフォームで、タイミーのような1日数時間単位でお仕事を探せるようなオンラインマッチングサービスです。こちらは県内では伊東市が既に導入しておりまして、今年、静岡県議会のほうでも取り上げられています。また、今年の行政甲子園2024では、マッチボックスを活用した湯沢町が審査委員長特別賞を受賞しました。
こちらから少し引用させていただきますと、湯沢町は人口8000人ほどですが、マッチボックスにより、令和4年から1年弱、11か月で単発雇用から長期雇用に移行した人数だけでも51人となりました。これを導入したきっかけは、子育て支援課に保護者の方から、コロナ禍の影響でパートが減ってしまい、どこかパート情報をまとめたものがないかという問合せが入ったところ、そこで、単なる労働力不足の解消ではなくて、子育てや介護など、家庭の事情で長時間働くことのできない方にも手軽に働くことができる多様な働き方を提供したい、そんな地域づくりを目指して導入したとのことです。
また、こちらはいろいろな施策とも関連させておりまして、例えば移住・定住促進として、インターンシップページの開設や、移住前のお試し就業をしたり、商業振興で生産性向上、農林振興で繁忙期の人材確保、また、佐藤議員が取り上げていましたが、保育士確保策として、会計年度任用職員採用のためのインターンシップの窓口など、中長期的な就業を見据えた接点づくりに活用したりと、本当に様々な活用ができるかと思います。
そこで産業交流部長にお伺いしたいのですが、こういったマッチボックスのようなサービスの導入などを検討するのはいかがかお答えください。
産業交流部長(簑木真一 君) 今後、マッチボックスに関してどのように考えているかというところでございます。まず、労働力人口の減少が見込まれる中で、人手不足の解消ということが課題だよということで、市長答弁にもありましたように、私どもとしては、労働の供給側、労働の需要側、両者のマッチングといった多面的なアプローチで、雇用状況の改善、就労支援に取り組んでいきたい、そのように考えております。
議員から今御提案がありましたマッチボックスですけれども、先ほど話がありましたように、最近は仕事の探し方が多様化しているという状況にありますので、やはり私ども行政としましても、就業支援の取組は時代に即した新しい方向で取り組む必要があるのかなと思っています。
御案内のマッチボックスは、私もインターネットで検索したことがあるんですけれども、1日単位とか数時間での仕事を見つけることができるサービス、いわゆるDXを活用したプラットフォームということで、働き手と企業のマッチングの選択肢が増えるということで、人手不足の解消に寄与すると思っております。また、行政がこのサービスを導入することで、働き手、それから、企業にとっては安心感が得られるというふうな面もあると思いますので、今後、導入事例についての情報収集を行いまして、コストですとか効果等々についても、併せて確認、検証などをさせていただきたい、そのように思っております。
3番(市川真未 議員) 今すごく前向きなお答えだったのかなというふうに思うんですけれども、本当に仕事の探し方というものが多様化している中で、人海戦術というか、実際にいろいろ出会えるような就職面談だとか、いろんなものも必要だとは思いますが、こういった時代にマッチしたようなものをどんどん取り入れていく必要もあるかと思います。
ユニバーサル就労支援と同様に、マッチボックスというのは、業務を分解して見える化することで仕事の洗い出しをして、ほかの業務も効率化することができるので、こういった取組をすることで、DXの推進なんかにもつながっていきやすいのかなというふうに思います。
実際に人手が足りないというところはいろいろな場面であると思うんですが、例えば、現在開催中の芸術祭、富士の山ビエンナーレでは、県の補助金を活用して、就労支援事業所からスタッフを有償雇用しています。従来のイベントでは、無償ボランティアというやり方が多かったかと思うのですが、そういったやり方を刷新しているなというのと、アーティストとか多様な人と関わることで、スタッフの方もすごく生き生きと働いていらっしゃって、こういった体験の積み重ねというのが、今まで働けなかったけれども、実際に働けるようになっていったりだとか、人材の創出につながっていくんだと私は感じました。
女性やシニアなど多様な人材が、生活上の制約がある中で能力を発揮できる環境を今整えなければ、この人口減少社会において未来はないと考えています。
ユニバーサル就労の理念に基づいて、年齢や性別、障害の有無など関係なく、働きたくても働くことができない状態にある全ての人が一人でも働けるよう、様々な観点から、社会参画できる人、そして、時間を増やすきっかけを行政の中でもつくっていっていただければと思います。
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